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Alternative991's Blog

アニメで気になった描写の忘れ形見

『咲-saki-』回想シーンにおける蝶描写

咲-Saki-』第1巻p.109~110(アニメ第3話)の回想シーンは、照が幼い妹に嶺上開花の役の意味を教えてあげる場面。
現在の咲さんの契機となったであろう一幕であり、転寝してる彼女が回想から覚めた際には、花にいた蝶がそのまま鼻先に描かれ<過去→現在→未来>,<静→動>を示す舞台装置として活かされていました。
 
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ほひょおぉぉお! モブ化する前の幼女咲たんぺろぺろ~
咲-Saki-』の蝶描写については前々から思うところがあったので、今更ながらこの回想シーンについてアニメ版と漫画版を比較しながら書いておきます。

アニメ版(第3話 06:34~)


では早速アニメ版から。これは以前の記事のように比較するまでもなくモンシロチョウですね。花は詳しくありませんが、調べてみるとキタダケソウっぽいです。
 
この一画を見る限りでは、アニメ版は写実表現よりも演出表現を優先させているのだと考えられます。
その理由のひとつが蝶と花のサイズ比が明らかにおかしいこと。一般的なモンシロチョウの大きさは前翅が約3cmで翅を広げたら5~6cmなので、目算でもこの花径は10cm以上もあることになります(キタダケソウの花径は約2cm)
細部にこだわりをみせた制作陣がこうしたミスをするとは思えないので、これは演出優先で「おまえもそんな花のように、強く咲けば…」と語りかける照の台詞を強調するためにあえて花を大きく描いたのでしょう。
 
アニメに限らず、作品内でのスケーリング描写は一見ミスに思えても故意による演出の場合が多いので判断が難しいところでもありますね。
 
もう一点はそもそもモンシロチョウは高山域には生息しないということ。これは高山域には幼虫の食草であるキャベツ類がないためです。
そのため日本アルプスの森林限界がおよそ2,500mであることを鑑みると平野部や市街地に生息するモンシロチョウの姿を描くのはミスマッチだといえます。強いていえば高山域でも風によって稀に飛来することがあることくらいでしょうか。
 
この高山域におけるモンシロチョウ描写は原作(後述)にも反するものであり、あくまで時間経過と物語の再始動を表す演出意図(GIF画像)によるものだと考えるのが無難だと思います。

原作コミック(第1巻p.109)


では原作ではどのように蝶が描かれていたのか。まず高山域のシーンではモンシロチョウではなく小型なシジミチョウ科(前翅約1~2cm)が描かれています。
平野部を中心に棲むモンシロチョウとは違い、シジミチョウは平野部以外にも種によって高山域にも数多く生息しているため生息域とはマッチング。
 
斑紋(翅の模様)もすごくリアルで、おそらくはヤマトシジミやゴマシジミあたりの個体パーツを組み合わせて描いたか、一個体の特徴を掴んだうえでデフォルメしたかといったところでしょう。
 

注目したいのが続く回想から覚めたシーンではアニメ版と同様モンシロチョウが描かれているということ。Ritz先生がどこまで蝶にお詳しいのかは存じませんが、これはもう高山域ではシジミチョウ、市街地ではモンシロチョウといった蝶の生息域を勘案したうえで描き分けているとみて間違いないと思います!
(いやその…単に「キタダケソウのサイズに合うのがシジミチョウで、咲さんの顔サイズに合うのがたまたまモンシロチョウだったから」なんて理由もありそうだけど、とりあえずそんな詰まらない仮定はこの際置いておきます。)
 
前作『FATALIZER』でも自然や建造物を鮮明に描いていましたが、蝶という小さな個体をこれほど丁寧に描いている作品ってそうそうないので個人的には読んでてかなり嬉しかったですね。
 
仲のいい姉妹関係が伺えるため強く印象に残るこの回想シーン。本筋とはちょっと外れた細部でも、アニメ版はコマの連続映写を活かした演出で楽しませてくれ、漫画版は分割されたコマ割りというそれぞれの媒体特性を生かした表現がなされています。これぞRitzくおりてぃですね。
 
別に『シノハユ』の「温泉・パンチ・グッド」みたいな暗号謎掛けが好きというわけではないのですが、細部をふと見返したときになんらかの意味があったことに気づく瞬間ってやっぱりたまらないです。
麻雀以外にも多くの切り口から楽しむことができるのが『咲-Saki-』のいいところでもありますね。
 

小話


アニメの後期OPにも登場するキタダケソウは、wikiによると“花期は雪解けの6月中旬から7月上旬と他の高山植物よりも早く、登山最盛期の8月には姿を消してしまう”んだそうな。
時期的にもインハイと被るし、最盛期に散り行く定めだなんてこの花はまるで大会出場者そのもの。そう考えると高原に咲き誇る無数のキタダケソウを見てるだけで胸に来るものがあるではありませんか…
 



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