ここでは東ドイツ国歌「廃墟からの復活(Auferstanden aus Ruinen)」が収録されたCDを紹介しています。現在各動画サイトなどで視聴可能なものは全て同じ音源が用いられていますが、いざこの音源を「より高音質で聴きたい」と思っても肝心のCDはなかなか探しづらかったのでまとめてみました。
国歌の概要
作詞は東ドイツの詩人で文化大臣も務めたヨハネス・ベッヒャーによるもので、作曲は1949年、シェーンベルクの弟子で戦後は劇場・映画音楽などを数多く手がけたハンス・アイスラー(Hanns Eisler:1898-1962年)によるもの。
「廃墟からの復活(Auferstanden aus Ruinen)」という表題以外にも“DDR Nationalhymne”や“Die Hymne der DDR”(DDRはドイツ民主共和国:Deutsche Demokratische Republikの略)といった国歌表記が見受けられます。
歌詞にはドイツの統一と第二次世界大戦による荒廃からの復活の願いが込められており、当時の状況を思い浮かべながら聴いていると、国家の威信と尊厳の復活、さらには恒久の平和を望む思いがひしひしと伝わってくる名曲です。
当初は公の場で歌唱されていましたが、1970年代に入り東西ドイツの和解が進むと、ソビエトから「einig Vaterland(一つの祖国)」という歌詞が東西分裂の現状にそぐわないとする圧力がかかり、その後は歌唱が禁じられ東西ドイツの統一を果たす1990年まで伴奏のみが演奏されるようになったようです。
2番には“我ら兄弟のごとく一致すれば、国民の敵は打ち砕かれるのだ!”といった歌詞がありますが、ここでいう“敵”が自国の為政者や国家体制そのものとなってしまうとはなんとも皮肉な結果ですね。
また、この曲は某アリスソフトの某ランスシリーズにメロディが引用されていることでも有名で、私なんかもこの曲は戦国ランスから知った輩です。
そのほかアイスラーとこの曲についてはこちらで関連サイトがまとめられています。
収録CD
Choral Childrens & Popular Songs(Amazon)
HMV → Choral Works
現在発売されている中で最も入手しやすいCD。音源は動画①と同じ。
ヘルムート・コッホ(指揮),ベルリン放送交響楽団,ベルリン放送合唱団
録音:1968.10.20 曲目はNAXOSで、試聴は独Amazonで確認できます。
歌声抜きのインストのみで聴きたい場合は下記2点があります。
Dem Morgenrot Entgegen-Hymnen
1曲目は動画①と同じ音源。2曲目が動画②と同じ合唱なしのインスト音源。
独Amazonリンク先で試聴可。米Amazonはこちら。
世界の国歌大全集岩城宏之(指揮)
N響による珍しい録音。国内盤ですが残念ながら廃盤。
こちらは28曲目に収録されています。リンク先で試聴可。
探したところ見つかったのはこの3枚でした。他にもどうやら東西統一後に録音された音源があるらしいのですが残念ながら発見できず。他にも「こんなのがあるよ」という方がいればぜひ教えてくださいませ…((。_。(゚д゚ )ペコ
それにしてもこの曲…東西ドイツが統一を果たした1990年に国歌としてその寿命をまっとうしたと思いきや、同年には既にランスIIで「我が栄光」に引用されていたのですね。ランスIIからはかれこれ23年。ゲームに用いられた年月が純粋な合唱付随国歌であった年数を追い越すことを考えるとなんとも複雑な気持ちにさせられます。