Alternative991's Blog

アニメで気になった描写の忘れ形見

『グラスリップ』第1話「花火」の炸裂音響

ハーモニー(止め絵)描写がおもしろいと教えて頂いた『グラスリップ』。第1話ではリアルとアニメらしさが混在している花火音響に趣向が凝らされていたと思う。
 
まず前提として、僕の中ではアニメにおける花火描写については以下の記事が記憶に残っていたので引用したい。
gigazine.net

アニメーションで花火のシーンがあったりして、これは今までに3回くらい経験があるんですけども、アニメーションの監督は花火があると、音をずらしてくれ、って言うんです。実際に花火が光ってからドーンって聞こえるまでには時差があるじゃないですか。光って、1秒くらいたってから、ドーンって来るわけで、それがリアルですよね。なので、そうしてくれ、って監督は間違いなく言いますね。でも効果さんは「アニメでそれやると、おかしいよ」って言うわけです。でも監督は自分のこだわりがあるわけですから、リアルにしたい。「花火が光った時に音が聞こえるのは変だから、音をずらしてくれ」、と。「じゃあ試しにちょっとやってみましょうか?」って効果さんに直してもらって、音をずらすと、やっぱりね、何か失敗したみたいな感じになるんですよね。音がずれちゃった感じになってします。そうすると監督も納得して「元に戻してくれ」となるんですけど。そういうのは独特だな、と思いますね。

要はアニメの音響では現実の音をそのまま取り入れて再現すればいいというわけではなく、アニメの文法に寄り添う形でマイナーチェンジする必要があるという話。
 
グラスリップ』第1話でも花火はリアルの光と音の速さとは関係なく、空高く上昇し炸裂すると同時に爆発音(以下SE)が挿入されているが、ただ一発だけは炸裂し発光してから間を置いてSEが挿入されている。
その唯一の例外が境内へと続く階段を上る裕と雪哉の背後で炸裂したこの日一番の大きな花火(06:05前後)
 
 
 
このシーンだけは先の記事や他の作品とは違って炸裂音が一呼吸遅れてから挿入されるリアルな時間差で表現されていた。
 
これがもし作中全ての花火がリアルな時間差で挿入されていたら、違和感を抱きつつも「実験的で挑戦的な音響だ」という感想で終わっていたかもしれない。
しかし『グラスリップ』の優れた点は、アニメ的な炸裂と同時のSEとリアルな遅れたSEをあえて混在させ使い分けることで、後者の花火が放つ輝きと音の大きさを他の花火よりも際立せていることだと感じた(詳しくは本編映像を観て欲しい…)
 
正直なところ第1話は訳が分からない内に終わってしまった(そこがまたおもしろい)けど、今後の展開に光と音,距離と時間が関係した話が展開されていったらまたおもしろいんじゃないかと思わせてくれる力強い演出だった。*1
 

脚本:佐藤梨香 絵コンテ:西村純二 演出:安斎剛文
作画監督:竹下美紀 音響監督;辻谷耕史
制作:P.A.WORKS 監督:西村純二 副監督:安斎剛文

*1:06/25追記:観終わってから振り返ると、本作のテーマのひとつである「視覚の共有」という観点でいえば、花火大会メインの大玉を裕と雪哉は見逃してしまった=場を共有していても女性陣と肝心な部分ですれ違っているというのが落としどころかもしれない