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Alternative991's Blog

アニメで気になった描写の忘れ形見

東日本大震災チャリティ企画 山本寛監督アニメーション「blossom」 感想

「blossom」は、東日本大震災の2周年である2013年3月11日に、チャリティ団体Zapuniによってプロジェクト第1弾として公開されたうちの1本です。
今作は「かんなぎ」や「フラクタル」などで知られる山本寛(通称:ヤマカン)監督が手がけたもので、『アニメディア2012年06月号』や『Megami MAGAZINE 2012年 07月号』に付属したDVDとはナレーションの換わりに音楽が入るなど内容が異なる様子。
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Zapuniとは、有志により2012年に設立されたチャリティのための団体です。Zapuniの目的は2つ。
1つ目は、日本のビジュアルアーティストと世界のミュージシャンをつなぎ、クリエイティブなオリジナルビデオ作品の共同制作を促進すること。
2つ目は、Zapuni作品を見たみなさんからの寄付や購入を募り、災害の影響を受けた子どもたちの生活に役立てること。

http://zapuni.com/ja/about/

「blossom」 監督: 山本 寛 音楽: シガー・ロスSigur Rós

 
初見の感想としては、作中に出てくる天使を「死者の象徴」と捉えたうえで「アニメーションとしては大好きだけど、震災物としては好きになれない」というのが素直な気持ちでした。それは作品自体がどうこう以前に、私自身の前提として死者を具象化するという行為を受け入れ難く思っているためです。※
しかし、少し頭を冷やして他の解釈も可能なのではないかと思い改めて見てみると、天使は死者の象徴としてはもちろんですが、それ以外にも私たちにより身近な生者≒復興を支援する国内外の「私たち」と捉えてもよいですし、ただ気まぐれに願いを叶えてくれる存在として捉えてもよいことに気づきました。
序盤の天使のようにただ遠巻きに眺めいてもどかしい思いをするくらいなら、少しでもなんらかの支援をすることで「花(blossom)」を咲かせることくらいはできるのではないか。そういった意図が含まれてるように思います。
各部分的には決まった解釈ができても、全体としてはあえて凝り固まったメッセージ性や統合性を与えずに複合的な解釈を可能にする。それこそが今作においてヤマカンが目指した着地点なのではないでしょうか。
 
ちなみに、初見で私が天使を死者の象徴と一義的に捉えてしまったのには次のような理由があります。それは私が実際に現地の方のお話を聞いたりTVのインタビューなどを見ていると、ああした方の口からは「亡くなった人も頑張れ頑張れって応援してくれてると思う」と語られることが多かったことに因ります。私自身が現地民(といっても津波被害は受けませんでしたが)であるせいか、どうもそういった語り手のイメージが頭に強く残っていて、今回のアニメでもあの天使は“頑張れ”と応援してくれる死者として描かれているのだと決め付けがちだったのだと思います。
今作に限ったことではありませんが、やはりアニメは感情的に捉えるだけではなく、いろいろな解釈が出来てなんぼのものですね。
はじめは震災物としては否定的に捉えてしまいましたが、結論として「blossom」はアニメーションとしても震災物としても素晴らしいアニメだと思います。
 
最後に、ありきたりではありますが、作品の本質としてはこれを観て何を考え行動していくかなのでしょう。この企画を通して、あるいはもっと別のアプローチから被災地とどう関わっていくかを再考し行動に移せるようにしたいですね。
1人の宮城県民として、こうした視聴者に考えさせるアニメをチャリティプロジェクトとして作ってくれたのは非常に嬉しいことですし、この作品はぜひ多くの人に見てもらいたいと思います。
アニメを制作して下さったZapuniの有志の方々とOrdetおよび山本寛監督に感謝を表し、結びとすることにします。
 
Zapuni 公式サイト:http://zapuni.com/
 
 



※これはあくまで私個人が思っていることであり、他人に対して「死者を愚弄するのか」などと言う気はありません。ですが少なくても私は他人の死を具象化してそれを題材に感傷に浸るような気にはあまりなれないのです。これは「人の死は何ものにも表せないし何ものにも替え難い」というのではなく、単に私が死に際した場合に「表して欲しくないし替えて欲しくもない」と思っていることが大きいのだと思います。とにかく「死」は死としてただそこに横たわっていて欲しいのであって、無理に起こしたりましてや象らせたくはないのです。
 
Megami MAGAZINE (メガミマガジン) 2012年 07月号 [雑誌]

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